はたらくことの意味は、だいたいドラッカーが教えてくれた。

働くことの意味、人生の意味を喪失した私が、ドラッカーと出会い意味を取り戻していくまでの、10年とちょっとの人生記録。

「効率化」の真の意味を知った日々のこと。

入社から半年が過ぎた2007年6月、まだまだ継ぎはぎだらけのチームではあったものの、ひとつの戦略を共有してチーム全体が動くという流れにはこぎつけた。

そこで私は、次の大きな課題に向き合うことにした。

 

 

それは「日々の利益が把握できない」「商品カテゴリ別の売上が把握できない」という、とても大きな課題だった。

信じられないかもしれないが、当時のネットショップではありがちな光景だった。オークションやタイムセールという販売側の仕掛けだけが先行して成長したため、そもそも同じ商品でも売価はバラバラだった。製造直売型のため、原価は毎月変わっていたが、それも反映できていなかった。

顧客との取引は、モールの仕組みを使えば、一応は完結する。売上だけなら、貧粗ではあるがデータも一応は把握することが出来る。しかし、売上だけではなく粗利益の推移を時系列で把握し、機動的に仮説検証を行うための仕組みは、何もなかった。

 

 

手始めに、ネットショップ向けの業務パッケージを検討した。しかし、2007年当時、自社の業務にフィットするパッケージは皆無だった。ほとんどのパッケージが、自社よりかなり小さな規模のネットショップを対象としたものだった。

最大の課題は「1出荷元」にしか対応しない業務パッケージしか存在しない事だった。極力在庫を持たずに多様な商品をそろえて運営することが自社の強みだったため、この選択肢は早々に外さざるを得なかった。

各地にある工場から、大型家具をわざわざ倉庫に運び込んで一元出荷するコストを考えれば、業務システムの方を自社用に開発する方が、コストがかからない事は一目瞭然だった。



こうしてシステム開発のプロジェクトがスタートした。約1か月半にわたり、週3日は打ち合わせ漬けの日々。打ち合わせは深夜まで続く日もあり、長い日は12時間以上に及んだ。

すべての業務をひとつひとつの仕事に分解し、分解した仕事を作業に分解し、すべての作業にあるべき手順を定めていった。のちにドラッカーを学んで知ったことだが、「仕事のマネジメント」の基本である、仕事の設計を全業務に対して行うことが、この打ち合わせのゴールだった。

あるべき業務の流れの検討に平行して、データベースの項目と、画面の設計が行われていく。特に画面の設計の打ち合わせには、システム関係の前提知識がなにもない受注担当スタッフも入るので、予想もしない要望や質問が出てくる。これら現場からの要望もふまえつつ、設計は進んで行った。

 

 

元々システム業界に在籍していたが、当時は営業というポジションだったので、実際のシステム設計に本格的に関わるのは初めてだった。クライアント側の立場でシステム設計に関われたことは、とても貴重な経験だった。

なにより貴重だったことは、「効率化」という言葉の真の意味を知ったことだった。それまでの私は、必要のない手順を省いていくことを効率化だと思っていたが、それは違った。

必要なプロセスを、よりよく設計することが「効率化」なのだと、この時はじめて経験から知った。



【今日のドラッカーの言葉】
事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである。

<P.F.ドラッカー 創造する経営者> 

 
<コメント>
「仕事はプロセスである」とドラッカー教授は言います。プロセスであるということは、インプットとアウトプットがあり、その間には手順があるということです。「効率化」とは、この手順の部分を最適化し、最も生産性の高い設計を行うための一連の行為なのです。


この手順の設計が人任せになっていたり、古い設計のまま何年も使っていると、「非効率的な仕事」が生まれます。多くの企業では、非効率的な仕事をしている「人」の問題とされがちですが、そもそも仕事の設計が非効率的であれば、誰がやっても非効率な仕事にしかなりません。

外部環境の変化に合わせて、プロセスは変えていかなければなりません。かつて効率的だった設計も、時が経てば非効率な仕事になるかもしれないのです。事業もプロセスであり、業務や仕事もプロセスなのです。私たちは仕事を生産的に行うために、常にプロセスを管理し、見直さなければならないのです。

  

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